みそさざいの囁き(浅木ノヱの季語のある暮し)

生活の中に詩を、俳句を。季語のある暮しを楽しみます

若布干す

若布干す若布に頰を打たれつつ ノヱ 

 浜小屋の一番乗りはおばあさん。小さなコンロの薬缶が湯気をたてはじめるとおじいさんと、だんだん家族が増えてゆき、沖から軽やかな音を立てながら船が戻ってくる頃になると、家族総出の若布干しがはじまる。

 慣れた手つきで若布を選別していくおばあさん、胸まである白い長靴のおじいさんを中心に、張り巡らせた洗濯ばさみに若布をどんどん干していく。小さな子供も手渡すお手伝い。

 うららかな日差しの中、そんな穏やかな浜辺を白い富士山が見守る。

 *第1回俳人協会神奈川支部俳句大会 入選句