みそさざいの囁き(浅木ノヱの季語のある暮し)

生活の中に詩を、俳句を。季語のある暮しを楽しみます

寒稽古

     切絵:小出蒐

  高校時代は全国大会に出場したこともある弓道少女でした。

 1月に開かれる射初式や寒稽古は、身の引き締まる寒ささえどこか心地よく、普段とは異なる緊張感や華やかさに心を躍らせました。大先生の模範演技の老いを感じさせない気迫、紫の小袖を召した先輩の流れるような所作、「礼」がこんなにも美しいものと知ったのも弓道だったような気がします。

 今日は大寒。来週からは鎌倉でも猛烈な寒さとなるようです。

大寒の静寂切り裂く一矢かな  ノヱ

 全身から白い湯気がたつ厳寒の弓道場。凛と張り詰めた空気におしつぶされそうになりながら、二十歳の弓をひく。無限の可能性があるような、ないような、つかみきれない未来に揺れ動いていたあの頃。放った矢は迷うことなく的に吸い込まれていった。

(切絵作家の小出蒐さんとのコラボで、3年ほどオリジナルカレンダーを作っています。転載)