みそさざいの囁き(浅木ノヱの季語のある暮し)

生活の中に詩を、俳句を。季語のある暮しを楽しみます

寒稽古

     切絵:小出蒐

  高校時代は全国大会に出場したこともある弓道少女でした。

 1月に開かれる射初式や寒稽古は、身の引き締まる寒ささえどこか心地よく、普段とは異なる緊張感や華やかさに心を躍らせました。大先生の模範演技の老いを感じさせない気迫、紫の小袖を召した先輩の流れるような所作、「礼」がこんなにも美しいものと知ったのも弓道だったような気がします。

 今日は大寒。来週からは鎌倉でも猛烈な寒さとなるようです。

大寒の静寂切り裂く一矢かな  ノヱ

 全身から白い湯気がたつ厳寒の弓道場。凛と張り詰めた空気におしつぶされそうになりながら、二十歳の弓をひく。無限の可能性があるような、ないような、つかみきれない未来に揺れ動いていたあの頃。放った矢は迷うことなく的に吸い込まれていった。

(切絵作家の小出蒐さんとのコラボで、3年ほどオリジナルカレンダーを作っています。転載) 

 

   

 

 

みそさざい

七里ガ浜の初日と江の島

 

 コロナ禍真っ最中の長男夫婦は帰宅せず。次男は書棚から古い文庫本の「雪国」を見つけ出してきて、読んでいます。静かで、あたたかな元日でした。

 2023年1月号をもって、結社誌の編集業務を離れました。これからは東京に出ることも少なくなりそうです。

 「東京に出なくていゝ日鷦鷯 万太郎」

 鎌倉で仮住まいだった頃の万太郎の句にちなみ、今年よりタイトルを少し変更しました。これからもよろしく、よいお年をお迎えください。     

  

      一つづつ下ろす肩の荷みそさざい  ノヱ

 

飛蝗(ばった)

とまれ、こばった!

 

草の秀のとんで精霊ばつたかな ノヱ

 切りとばした爪くらいの大きさだったバッタは目にするたびに大きくなり、ついに小指くらいの大きさに。それに合わせて食害は増え続け、大葉の葉は完全に消失。今年の零れ種から咲き始めた朝顔の葉も穴だらけになってしまった。消毒薬は効かず、木酢液も連日の雨のせいか効果は今一つ。その都度捕まえては・・・と原始的な方法で応戦するが、それをあざ笑うように、ここ数日はおんぶ姿でおでましになる。

 どうしたらいいのか、どなたか教えて!

 

 先日、俳人協会第61回全国俳句大会の結果がとどきました。特選には入りませんでしたが、多くの選者の方から選をいただきました。ありがとうございました。

   考ふる蟻ゐて列の乱れけり  

  

風船葛

 

わが家の竹垣に揺れる

 昨日は、鎌倉句会で指導いただいている三上程子先生の朗読会に行ってきました。読物は太宰治の『饗応夫人』。三上先生のやや甲高く、細く艶めいた声が、「泣くように笑う女」の奥様を熱演され、他人に翻弄されながら落ちぶれてゆく女性の崇高なまでの美しさ、太宰の美学にとっぷりつかってきました。

 散歩の途中で「ご自由にお持ちください」と書かれた風船葛の苗をいただいてきたのが去年。植木鉢に植えたらまあよく育ち、今年は種から育て、さらに零れ種からか庭のあちこちから芽が出て、気が付いたら風船葛の家になっています。緑色の実は、日に透けると金色となり、音もなく風に揺れ、まるで風を遊ばせているようです。

  

  

花野忌

榛名山のふもとに広がる花野、紫色の花が松虫草

 9月1日は竹久夢二の忌日です。今秋発売される角川大歳時記で、初めて夢二忌の傍題に「花野忌」が加わりました。それは30年近くにわたり「夢二忌俳句大会」を推進してきた俳人・木暮陶句郎をはじめとする群馬県伊香保の方たちの活動の成果と言っても過言ではないでしょう。

 夢二画の女性は秋草の風情がただよい、「花野忌」という美しい呼称は、夢二忌にこそふさわしいように思われます。

 夢二はこよなくこの地を愛し、榛名湖畔にアトリエを建てました。また伊香保には竹久夢二記念館があり、その作品の収集保存だけでなく、大正ロマンの風情を十二分に楽しませてくれます。

 今回3年ぶりに榛名山のふもとに広がる花野に足を運びました。以前より芒が増えているように思いましたが、木道の中ほどまでゆくと薄紫の松虫草イワシャジン、萩や吾亦紅などがしずかに、さみしく群れ咲いていました。